友達100人できるかな(2) (アフタヌーンKC)
ハズレのない漫画家、豊田みのるの最新刊です。
ある日突然、世界中の大都市の上に大量の宇宙船の襲来を受けた人類。突然現れた宇宙人達の姿にパニックになる人々。もうじき妻の出産を迎えようとして病院にいた学校教師の主人公は、そんな渦中にその宇宙人たちの一人に連れ去られた。宇宙人いわく、「我々は愛を知るものは侵略しない。だから君たち人類に愛があるかどうかの試験を受けてもらう」。そう言われた主人公は、その試験とやらの内容に沿って、自分が過去の世界に、過去の自分自身となって送り込まれたことを知る。小学校を卒業するまでに100人の友達が出来れば試験には合格。もし失敗すれば人類は滅亡。
過去の世界に戻された主人公の隣には、これまた小学校の姿に変身した宇宙人がいた。かくして二人は地球の運命をかけた友達作りとその監視役として、生活することになった。。
バリバリのタイムSFでありながら、ほのぼのとしたギャグ作品でもあるという本作はいかにも豊田みのるテイストで溢れかえっていて、大変面白い。身体は子供、心は大人なんていうと名探偵コナンみたいだが、彼がやることは友達を作ること。しかもそれを腕時計型のメカでしっかりと数値確認しながら行なうというなかなかなハードなこと。一人セットするとその相手との友情ができるまでは他の誰とも友情を作れない/はかれないという極めて厳しい条件の中で、あの手この手、大人の智慧と子供の気持ちとを駆使して頑張る姿は設定のたくみさもあいまって面白い。そして、その大人視線の中で、子供と大人の差分というか価値観の違いが作品のアクセントになっているところもまた興味深い。
この二巻ではそういう部分がさらにクローズアップされていて、犬との友情や、大人からみれば残酷な小さい子供との友情などという変化球も見せてくれるし、パラレルワールドの存在が登場するなど外見の絵柄のかわいさやほのぼのした世界の裏にみえるSFマインドもさらに強化されていて、ますます面白くなっています。ここまできたら、是非是非本当に友達が100人できるところまで続けて欲しいです(まぁ、まだ11人? ほどなので、ずいぶんと先が長い話ですが^^)
FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)
いささかつかみ所のない女の子を好きになってしまった、平凡な主人公。
彼女が交際の条件としたのは、ゲームセンターにあるピンボールゲーム
の超人的なハイスコアを抜くことだった・・・。
ありそうでなさそうなお話ですが、全身全霊で努力する主人公・・・。
いつしか二人の関係は・・・。
つかみどころがなく、飄々としている不思議な雰囲気のヒロインや極限の
集中力を発揮する主人公の描写もGOOD。
読後感のさわやかさもすばらしい。
ピンボールは作者の趣味らしいが、取材を兼ねて本当にシカゴまで行くほ
どの凝りようなので、プレイに関する含蓄も面白い。
「ラブロマ」や「友だち100人できるかな」のような個性的な秀作を
連発しているとよ田みのるらしい素朴な魅力がつまった作品。
なお、余談ながら当作品を読んで、実際ピンボールをやりたくなったものの、
近隣のゲーセンでピンボール機を置いてあるところは激減しており、ゲー
センそのものの数も減少しているようである。かってはデパートの屋上や
遊園地、温泉旅館などどこにでもあったのだが・・・。
アメリカの国民的遊技もテレビゲームの普及とともに老舗メーカーは次々に
廃業を余儀なくされ、新品を製造しているのは僅か一社のみだという・・・。
とよ田作品のなかではいちばん続編が読みたい作品であります。